作品NO.58 6000字
<2クール> の 名作>良作
ジャンル ドラマ・アクション・思春期・シリアス
※旧サイト記事(初投稿:2018/10/09)
※ 全キャラクターの第一印象の整理・まとめに。
作品NO.58 『刀使ノ巫女』
<2クール> の 名作>良作
※指標:90(めちゃくちゃ良い)>75(良い)>50(2流)
世界観:95 脚本/構成:90 演出:85
キャラ:95 演技(声優):85
引き:70 劇伴:75 作画:75
Ave. 83.75
ネタバレ厳禁度:★★★★☆
作品データ/スタッフ/キャスト
2018年 1月~6月
TOKYO MX、他
全24話
オリジナル作品
監督:柿本広大
原作:伍箇伝計画
シリーズ構成:髙橋龍也
キャラクターデザイン:しずまよしのり(原案)/ 八尋裕子
剣術監修:神無月久音
アクション作画監督:神谷智大
音楽:橋本由香利
アニメーション制作:Studio五組
衛藤可奈美:本度楓
十条姫和:大西沙織
柳瀬舞衣:和氣あず未
糸見沙耶香:木野日菜
益子薫:松田利冴
古波蔵エレン:鈴木絵理
はじめに
引用元:©伍箇伝計画/刀使ノ巫女製作委員会
千鳥や小烏丸といった「御刀」に選ばれた少女である「刀使(とじ)」達が、荒魂と呼ばれる化物を斬って祓う――本作の根幹となる設定だが、初めて聞いた人はどう思っただろうか。おそらく、新鮮だと感じた人はあまりいないだろう。そして視聴を始めると、1話では変身ヒーロー的な要素やいわゆる天下一武道会のような場面があり、更に最後に……と視点が定まらない。
少なからぬ人はこう思うのではないだろうか。「よく分からない」と。
しかし待ってほしい。あなたは例えば初対面の人の性質を見抜ける自信はあるだろうか。あるいは初対面の相手に自分の美点を欠けることなく伝えられる自信はあるだろうか。
相手を理解することや自分を理解してもらうことは、一気に進むことはあっても基本的には一歩一歩の積み重ねから生まれていることが多い。この作品との付き合い方は、そういう人との付き合い方と特に似ている。つまり「分からない」を「少し分かる」に変えていく過程に大きな面白さのある作品なのだ。そしてそういう付き合い方は、意味不明とすら言える1話からしっかり埋め込まれている。
【みどころその1】時間差で伝わる真情、性質
引用元:©伍箇伝計画/刀使ノ巫女製作委員会
本作には「写シ」という、刀を使った対人アクションを成立させるための重要なギミックが存在する。どういったものなのかはもちろん1話の内に明かされるのだが、視聴者がその言葉を聞くのと効果を知るのは同時ではなく、少々時間をおいてからだ。そしてこうした時間差は、本作全体に常に存在している。
1話では主要キャラ11人が全員登場し、様々な第一印象を与える。このキャラは剣術マニアで向こう見ず、このキャラはクールで親しみにくいタイプ、このキャラは能天気。エトセトラエトセトラ……しかしあなたが最終回まで見た時、その第一印象のまま変わらないキャラは1人も存在しないだろう。
彼女達は嘘をついているわけではなく、本当のことを全ては1話で語っていないに過ぎない。人付き合いで相手をすぐに理解できないように、私達もまたひと目で彼女達を理解することはできない。
1話また1話と視聴を続けることで、私達は彼女達がどのような内面を持っているのかを一歩一歩知っていく。そうして過去の行動を振り返った時に初めて、彼女達がかつて何を考えていたかに理解の手を伸ばすことができる。
誰か1人をそういう位置に据えて大々的に扱う作品は数多いが、本作は主人公を含めた11人全員がそうした探るに足りる内面を持っている一方、ことさらにはそれを強調しない。結果として本作は振り返った時、あるいは見返した時、「伏線と思ってすらいなかった何気ない描写が後に繋がっていた」という事態が溢れんばかりに多発することになる。いわんや初見時は意味不明と困惑するであろう1話に至っては、だ。
本作を視聴する時は、描写や行動に疑問を感じたら「脚本が雑」「尺不足」と切り捨てず、頭に留め置いて推移を見守ってみてほしい。おそらくその多くは後から、納得のいく真意を以てあなたの胸に届くはずだ。
【みどころその2】剣術を始めとした言葉だけによらない表現
引用元:©伍箇伝計画/刀使ノ巫女製作委員会
先述した「写シ」のギミックの説明だが、登場人物にとっては当たり前のものであるから、劇中では台詞では行われない。しかし当たり前ではない私達も、それが発動する様子を見て何のために、どのような効果があって行われるのかを理解することができる。
映像娯楽であるアニメは直接口語にする以外にも多様な語り方を持っているが、本作は特に人の身体のそれに極めて自覚的だ。なにせメインキャラクターである少女達は刀使、その身体で御刀を振るう存在なのだから。
本作の剣術において、いわゆる必殺技は基本的に存在しない。実在の流派を設定し監修された剣術描写は作品世界特有の技術を付加されつつもあくまで現実の延長であり、逆に何をやっているのか分かりづらい程だ。つまり人の考えがすぐには分からないのと同じだし、その内実を考えることはアニメ一般においてキャラクターの仕草から心情を想像するのと全く同じ意味を持つ。
例えば目的が他にあって気が急いているなら早期決着を目指した戦い方をするだろうし、試合し慣れた相手にいつもと違うことをしてほしければ自分もいつもと違うことをするだろう。アクションシーンを見る時は、彼女達がどんな気持ちで御刀を振るっているのかにぜひ思いを馳せてほしい。
もちろん剣術に限らず非言語的な主張、あるいは言語についても裏面的な主張は豊富であり、それらは先述した時間差で伝わる心情や性質を理解する時にも大きな力になる。1話で主人公である可奈美が口にする「よく見る、よく聞く、よく感じ取る!」という言葉は、作品を視聴する上できっとあなたの指針となってくれるだろう。
https://togetter.com/li/1203460
剣術監修を務めた神無月久音氏による、各話の剣術解説。実在の剣術がただそのまま持ち込まれているのではなく、作品世界に沿って落とし込まれていることも分かる。
視聴ガイド
一言で評させてもらうなら本作は「口下手なようでおしゃべりな作品」だ。どこで喋っているかを見つける段階で注意が必要で、良く言えば何度も見ても新しい発見があるし、悪く言えば初対面ではとっつきづらい。
人は長年付き合った相手であってもその全てを知ることはできない。「分からない」から始まって、どこまで行っても「少し分かる」程度。
しかしそれは逆に言えばどこまでだって分かりあえるし、いつだって先があるということだ。もしあなたが本作と真剣勝負をして、「少し分かる」を繰り返す喜びを感じてくれたなら、それは僕にとってこの上ない喜びです。
話数について触れるなら、作品との付き合い方の「少し分かる」が一定のラインに達する目安は5話。次に11話が1つのクライマックス。21~最終24話はいずれも圧巻の他、15話も少し毛色が違っていておすすめ。
またTVアニメ放送終了後も展開は続いており、スマートフォンゲーム「刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火(とじとも)」のキャラを交えた短編アニメ「みにとじ」が放送された他、2020年には上記スマートフォンゲームのOVAが先行放送・配信予定。加えて、TVアニメ前日談の小説1冊と本編終了後を描いた長編ドラマCDも2本が発売されている。
作品を見るには
- dアニメストア
- Amazonプライム
- この他ニコニコ動画やバンダイチャンネル、U-NEXT等で配信中
視聴終了後に閲覧をおすすめしたい感想
ぽんず(@ponzu_citron)さんの感想。作品の中心的な魅力とテーマが的確に語られています。
・ 『刀使ノ巫女』に見るスポーツの本質 ~魂のこもってない剣じゃ何も斬れない!~(自由堂ノックの「生きるは恥だが死に切れず」)
自由堂ノック(@daikumilk)さんの感想。スポーツと絡めた独自の切り口の感想が読み応えがあります。他にも和風SFとしての観点や全体への感想もあり。
評価・採点
作品評価
名作>良作
傑作 絶対観た方がよい作品
名作 観るべき、マストではずせない作品
良作 観た方がよい(がマスト!とは言い辛いかもという)作品
佳作 時間があるなら是非観ることを勧めたい作品
水準作 普通だが見どころは(十分)ある作品
凡作 酷いが全否定ではない、どこか残念な作品
失敗作 ほぼ全否定、何とも残念な作品
傑作・名作 傑作と名作の中間(ただしカテゴリは名作とする)
傑作>名作 傑作寄り(同上)
傑作<名作 名作寄り(同上)
※惜作 名作になりえた惜しい作品
※超神回 ずば抜けて素晴らしい名作回がある作品
レーダーチャート評価
世界観:95 脚本/構成:90 演出:85
キャラ:95 演技(声優):85
引き:70 劇伴:75 作画:75
Ave. 83.75
今回の評価での「世界観」は厳密に言えば「作品性」に対するものです。またアクションに対する評価は「演出」に含めました。
100 唯一無二、これ以上はそうそう望めない最高峰
95 最高、傑作レベル、文句なし、その作品にとってなくてはならない
90 めちゃくちゃ良い、名作レベル
85
80 かなり良い、良作レベル
75 良い
70 なかなか良い、佳作レベル
65
60 普通、水準作レベル、少々物足りないが及第点は出せる
50 凡作レベル、2流
30 失敗作レベル、3流
ネタバレ厳禁度
★★★★☆
要注意。ネタバレによって面白さ・衝撃度が低減する可能性あり
慣れない序盤はふわふわした視聴感を受けるかもしれませんが、その不安定さも含めて味わってほしい作品です。
関連商品
※本項のみpianonaiqも担当
円盤
国内版Blu-ray第1巻です(全6巻)。各巻特典はかなり充実しているようですね。
シリーズ構成の髙橋龍也さん書き下ろしミニストーリーは特におすすめです。
海外版も出てるようです(こちらは全2巻)
タイトルが「KATANA MAIDENS」なのが地味にファンの話題になりました。
書籍
視聴ガイドで紹介されているTVアニメ前日談を描いたノベライズがこちら。
ジャンルの違いが活かされており、アニメと重ねて捉えるとなお面白い作品です。
<アニメよりこっちの漫画の方が先なんですね。
よくわからなかった設定や用語が漫画だとわかりやすく入って来るので、アニメを補完する意味で手元に置いておくと良いと思います。
加えて、アニメにはないシーンが多めなので漫画ならではのお得感もあります。>
とあるレヴューからの引用ですが、コミック版も評判良いようです。
1クール版の刀使ノ巫女とでもいうべき内容です。序盤はアニメのフォローに、終盤はアニメを観終えてから違いを楽しむのが良いかと思います。
フィギュア、その他
本作メインヒロイン、衛藤可奈美のフィギュア結構いい感じですねぇ。可奈美は、本度楓さんの声が本当によくマッチしていて魅力的なキャラでした。
本渡楓さん、可奈美に相当惚れ込んでいて逸話に事欠きません。このフィギュアももちろん持ってるはずです。
今はすっかり売れっ子という印象で深夜アニメに欠かせない存在になってますが、可奈美を演じた本作は「本渡さんの代表作」といってもいいでしょうかねぇ。
益子薫&ねねのフィギュアも出てるみたいですが、これは座ってる感じがとてもいい……
彼女も人気の高いキャラですね。腰掛けてるのは彼女の御刀モチーフのクッションだそうです。
粋なこだわり!それは更にポイント高い…(笑)
衛藤可奈美の刀まで出ているとは…
女の子が使っているものなので、本編でも鞘を始めとした拵にも注目してほしいです
執筆者 : 闇鍋はにわ(@livewire891)
ブログ「アニメとおどろう」
https://dwa.hatenablog.com/
同ブログ内「刀使ノ巫女」関連記事
https://dwa.hatenablog.com/search?q=%E5%88%80%E4%BD%BF
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