7200字
「深夜アニメの歩き方」にようこそ!
こんにちは、pianonaiqです。
ここでは、本企画が採用している採点システム「レーダーチャート評価」について詳しく説明していきます。
レーダーチャート評価とは?
レーダーチャートは、
- 視覚的に瞬時にその作品の秀でたポイントや雰囲気、傾向を把握できたり
- 何作品かを並べて比べる際に図形の違いから意外なものが見えてきたりするところが面白い
ということで、ガイド本的に作品の見どころを紹介して興味を持ってもらうことを目的とする本企画においては、これによって見る作品を選ぶ際に読者の判断材料が増えるのはよいことだろう、と考えたのが導入の経緯であり目的です(作品のデータベースを作る、という観点でも有意義であるかなと考えています)。
採点にあたって
「企画に参加される方へ」の中でも触れていますが、
採点はあくまで目安である、と当企画では考えています。
採点にあたって、あまりにもアバウトでは問題ありですが、かといって厳密に考えすぎるとえらく難しくストレスを感じる作業になってしまう、というのは実際に私も行っていて今でも感じているところです。
なので、そこまで考えすぎず、というのも難しい話かもしれませんが、参加者の方にはそんな感じで採点を行っていただければと思います。
より採点に慎重を期すとなれば他の作品の点数との整合性を計ることも大事になってくるとは思いますが、採点基準表に従って「めちゃくちゃ良い」と感じたら90点をつける、そんな感じでもよいと思います。
8つのパラメータについて
- 世界観
- 脚本/構成
- 演出
- キャラ
- 演技(声優)
- 引き
- 劇伴
- 作画
以下8つのパラメータについて順に説明していきます。
ちなみに、ですが、パラメータ項目に何を入れるのかは色々と悩みました。
もちろん異論もあるとは思いますが、特別に専門的な知識がなくても誰もが採点できるような評価軸を作りたい、という趣旨を優先して各項目を設定した感じです。
世界観
定義の難しい言葉ですが、
- テーマ
- 設定(の強度、斬新さ)
- 雰囲気、空気感
- 舞台(背景)美術
- モブの描き方
- 映像の質感
……などなど、その作品の世界に関わるほとんど全ての要素を含んだものとして本企画では定義したいと思います。
採点にあたっては、上に挙げた多岐にわたる要素を見て総合的に判断する感じになると思いますが、その際に、
- 破綻のない設定により、キャラの生きる舞台としてしっかり世界が作りこまれているか
- 設定やキャラの生きる世界がいかに斬新(独創的)で唯一無二なものであるか
といった二点は特に重要な判断ポイントになってくるでしょうか。
- 世界は丁寧に作りこまれているけど、設定的には普通の学園もの、なので~点ぐらいに抑えておこう
- 設定は斬新で素晴らしいけど、随所に破綻が見られて何だか説得力に欠けるので点数はかなり落ちるかな……
- 多少破綻は見られたけどそれを補って余りある斬新なテーマがあるので点数を上げよう
ほんの一例ですが、だいたいこんな感じで総合的に判断して採点していただければよいのかなと思います。
脚本/構成
- 各話数における脚本の質
- 全体を見渡した時の構成の(シリーズ構成的な)巧さ
この二つを総合的に判断して採点します。
「計算され理にかなった巧さのある(破綻のない)素晴らしい物語であった」という場合は後者の評価が高いということになりますよね。
「全体的には物足りなさもあったけど一話だけ凄い名作回があったな」という場合には、前者と後者でどう折り合いを付けて点数を決めるのか難しくなってきますが、基本的には後者の物語全体の出来の方が前者よりも点数の中で大きなウエイトを占める感じになりますかね。
見終わった後満足できる作品(物語)であるかどうかを示すパラメータであると言い換えることも可能でしょうか。
演出
- カメラアングル、カメラワーク
- 構図
- テンポ感
- 芝居付け
……などなど、これも「世界観」同様に定義の難しい言葉ですが、画面に映し出されている演出効果はおおよそ全て含まれるものとします。
キャラ
シンプルにいえばキャラが魅力的であるかどうか、ですが、キャラ造形の質の高さといってもいいかもしれません。
「キャラがまるで生きている、キャラが立っている」などと語る時の質の高さを判断して採点する感じでしょうか。
演技(声優)
演技、といってもここでは声の演技のみを指すこととします。
よってこの項目では、
- 声優による演技
- キャスティング(声音がキャラに合っているかどうか)
の二つから判断して採点していただくことになります。
引き
「引きが強いね」などといわれますが、
各話において「続きが見たい!視聴が止まらない!」と強く感じるような時の面白さを「引きが強い」と考えた場合に、本項では「それが作品全編を通してどれくらい持続したか、どんな感じだったか」を判断して採点していただく感じでしょうか。
劇伴
「劇(シーン)を彩る(伴奏する)音楽」=「BGM」=「劇伴」の質の高さを判断して採点を行いますが、主題歌の出来も(必要とあらば)ここに加点/減点する形で含めたいと思います。
本来、主題歌は採点から除外すべきですが、何故このような少しややこしいことにしたか?というと、TVアニメではたまに主題歌のインスト曲を劇伴として使ったり、主題歌をそのまま物語本編で流したり、ということがあるので、その辺を考慮してこういう形にしました。
質の高い劇伴とは何だろう?という話ですが、例えば、
- その作品の世界観に合った曲想になっていたか
- シーンを適切に彩り劇伴としての役割を果たしていたか
- 楽曲単体として聴いても音楽性が高く、映像と相互に影響し合うような質の高さと存在感があったか
- 作品から離れてもいつまでも視聴者の記憶に残りその作品への想いを膨らませるようなインパクトが楽曲にあったか
こういった条件をより多く満たしている劇伴が「質が高い、優れている」ということになるのではないかと思います。
【補足】音響について
「音響(効果音)」はどの項目に含めればよい?という話ですが、関わるとすれば「世界観」と「演出」でしょうか(「劇伴」には含めません)。
作品の雰囲気作り、といった場合には「世界観」に、町の喧騒を聞かせる効果音から無音に切り替えることでシーンに趣を出すなんて場合には「演出」にそれぞれ関わってくる感じでしょうか。
作画
- 「人物」作画
- 「背景」作画
- 「モブ」作画
- 作画による「芝居付け」
といったあたりをトータルに判断して採点を行います。
実際の採点例(響け!ユーフォニアム)
前項で8つのパラメータについて説明しましたが、では実際にはどんな風に考えて各項目の点数を決めるのか?というあたりを「響け!ユーフォニアム」(以下、ユーフォ)を例に説明してみたいと思います(あくまで「私のやり方」ですので、こういうのが絶対というわけではありません)。
ユーフォは、いまや京アニの看板といってもよい人気シリーズとなった印象もありますが、中でも、特に2014年放映の1期で見られた破格のクオリティや刺激的な演出は後の作品に少なからぬ影響を与えたのではないかと思う作品ですね。
では早速採点の説明を。
ユーフォに関しては、旧サイトの方で記事を書いているのですが(新サイトへの移植作業はまだですが、やる時には大幅にリライトすると思います)、まず「世界観」からいうと、90点とかなり高得点を付けてますね。
これはまあ、ユーフォの世界観が採点基準にある「めちゃくちゃ良い」「名作レベル(観るべき、マスト)」といったニュアンスに合致したと思えたからであります。
©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
「めちゃくちゃ良い」と感じた具体的理由についてですが、
ユーフォでは、宇治の街並みや学校での日常風景、吹部の生徒達が手にするリアルな楽器、リアルな演奏姿――などが、京アニによる恐るべきハイレベルな作画によって(ここは作画の加点になりますよね)これ以上ない素晴らしいクオリティで再現されており、そこでキャラクター達がしっかり生き音楽に情熱を傾けているのだ、と確かに感じられるリアリティある作品世界の説得力は十分に高く評価できるものであろうと。
また、詳しい言及は避けますが、映像の質感やモブへの異常なこだわりはさながらアニメが実写的表現を手にした、と思える驚きもありそこも加点ポイントとなっていたり。
ジャンル的には学園青春音楽アニメということで斬新さにはやや欠けるところもあるわけですが、序盤で描かれる部内での不穏で倦怠した部活動あるある的雰囲気には意外性と刺激を感じられたので、その辺でも加点評価を行っています。
とまあ、だいたいこういったあたりを考慮しての90点、といった感じでしょうか。
続いて、ユーフォ1期12話で久美子が走り出すシーンでは多くのパラメータが関与していて且つそれぞれが高得点を出しているので説明にはもってこい、ということでその辺について具体的に。
©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
このシーンでは、久美子が「走り、泣き、切実なセリフを吐く」という一連の流れの中で、「身振り、表情、声優の演技」と3拍子揃った質の高い芝居が見られるのですが、ここでまず「演技(声優)」を加点評価、となります。
で、身振り、表情といった芝居を画面上に再現する作画、だけでなくモブ作画のクオリティもハイレベルなものになっているので「作画」も同様に加点評価対象になると。
また、そういった芝居付けをより魅力的に、効果的に見せるためのカメラワークの妙もあり「演出」も高く評価できる。
さらには、これまでの物語の流れの中で、ここでこうして我を忘れて走り出してしまう久美子の行動には胸を打つような説得力がある。それがキャラの魅力(=「キャラ」の高得点)につながるとともに、「脚本/構成」の単話及びシリーズ構成両面における高評価にもなる。
とだいたいこんな感じですかね。
「引き」「劇伴」は漏れてしまいましたが、
「引き」に関しては、ユーフォは放映同時リアルタイムで見てましたけど、特に8話以降は刺激的な演出への興味も手伝って物語の盛り上がりとともに毎週TVの前に正座待機したいくらいの勢いで見てましたので(笑)、その辺を考えれば高得点となりますでしょうし、「劇伴」も私としてはとても好みなものだったので高得点をつけた、という感じですね。
以上で説明は終わりです。
繰り返しになりますが、これはあくまで私のやり方、ということで、「なるほど、そんな風にやるのか」と頭に入れておいてもらいながら、あとは各自の判断でやっていただければよいのかなと思います。