作品NO.1 8000字
<2クール> の 名作
ジャンル 学園・青春・恋愛・ラブコメ
※旧サイト記事(初投稿:2017/09/08)
作品NO.1 『とらドラ!』
<2クール> の 名作
※指標:90(めちゃくちゃ良い)>75(良い)>50(2流)
世界観:75 脚本/構成:90 演出:90
キャラ:95 演技(声優):95
引き:75 劇伴:90 作画:90
Ave. 87.5
ネタバレ厳禁度:★★★☆☆
作品データ/スタッフ/キャスト
2008年 10月 ~ 2009年 3月
テレビ東京系列
全25話
ライトノベル原作(竹宮ゆゆこ)
監督:長井龍雪
シリーズ構成:岡田麿里
キャラクターデザイン:田中将賀
音楽:橋本由香利
アニメーション制作:J.C.STAFF
高須 竜児:間島淳司
逢坂 大河:釘宮理恵
櫛枝 実乃梨:堀江由衣
川嶋 亜美:喜多村英梨
北村 祐作:野島裕史
超弩級!学園青春、恋愛ラブコメの名作
『とらドラ!』は、シリーズ累計300万部以上を誇る竹宮ゆゆこの人気ライトノベル原作を、長井龍雪・岡田麿里・田中将賀の3人からなる超平和バスターズが原作ファンも納得のクオリティで映像化したアニメ作品。
本作が放映された2008年は、他にも『喰霊-零-』『ef – a tale of melodies.』『ミチコとハッチン』『魍魎の匣』『CLANNAD 〜AFTER STORY〜』『コードギアス 反逆のルルーシュ R2』など多くの名作良作が生まれた深夜アニメ史においても稀にみる当たり年でした。
記事タイトルで「深夜アニメラブコメの王者」と大きく銘打ってますが、本作は種々のアニメランキング系記事でも決まって上位に顔を出す作品ですし、おそらくこれに異を唱えるアニメファンは少ないのではと思います(がどうでしょうか……)。
そういう意味でも、まさに「名作保証書付き作品」「学園青春、恋愛ラブコメの名作」と呼ぶにふさわしい作品、それが『とらドラ!』ではないでしょうか。
またこの作品が語られる際、「超弩級」という言葉も度々目にしますが、大仰ともとれるこの言葉が、しかし確かに本作の魅力を端的に表しているなあと思います。
超ハイテンションで、とびきり切なくて、ヒロインの強烈な個性がただただ魅力的で、竹宮作品のエッセンスがぎっしり詰まっていて……
といったように、本作は作品を構成する凡そあらゆる要素が「超弩級」と形容するに足る魅力とパワーに満ちているのですが、その中でもやはり、深夜アニメ史においても屈指のツンデレヒロインといえる逢坂 大河(下図)が中心となって紡ぎ出される切ない恋愛ストーリーがもたらす全身を包むような圧倒的な感動(カタルシス)、これこそが「超弩級」と呼ぶに最もふさわしいものではないかと。
この点ではやはり21話が何といっても凄い、「超弩級」の感動を味わえる「とらドラ!」を象徴する名作回になるかと思うのですが、そこから突入していく最終25話までの終盤の怒涛の展開で得られる大きな感動もまた同様に「超弩級」といわれる本作の象徴であるのかなと思います(※恋愛ものでこの21話の感動と並ぶ、あるいは超える作品がいくつあるだろうか、と考えると「神回」と呼んでも決して大袈裟ではないのかなとも)。
引用元:©竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス/「とらドラ!」製作委員会
今回記事をブラッシュアップするにあたって色々画像を見てると、やっぱりキャラデザが凄くいい感じなんですよねぇ。時間があればまた是非見返したい作品です…。
虎と竜の物語
あらすじ
生まれつきの鋭い目つきが災いして、まわりには不良だと勘違いされている不憫な高校生・高須竜児は、高校2年に進級した春、新しいクラスで一人の少女――人形のように可愛らしい見た目に反する凶暴性から「手乗りタイガー」なる悪名で恐れられている逢坂大河と運命的な出会いを果たす。
放課後、竜児は誰もいない教室に一人残っていた大河のある一面を知ってしまう……。
本作最大の見どころは?
引用元:©竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス/「とらドラ!」製作委員会
「とらドラ!」=「虎と竜(ドラゴン)」
説明するまでもないですが、タイトルが表すように、本作は「手乗りタイガー」なる悪名を持つ逢坂大河と高須竜児の二人が主役の物語で、固い絆で結ばれた二人の強力な魅力が際立った作品ということに尽きるのではないかなと思います。
竜児はその見た目に反し、水商売で働く忙しい母親に代って掃除、洗濯、料理など家事全般を主婦レベルの見事な腕前でこなす心優しい性格の持ち主であり、そのギャップが魅力であるキャラ。
引用元:©竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス/「とらドラ!」製作委員会
一方の大河もまた竜児とは違った理由で学校内でどこか浮いた存在であるわけですが、完璧な容姿を備えた美男美女ではなくて外見も含めてどこかコンプレックスを抱えたような二人の尖ったキャラ造形というのが1話からとても印象的に感じられる作品なんですよね。
引用元:©竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス/「とらドラ!」製作委員会
何らかの問題があって学校で浮いた存在、というある意味似た境遇にある二人が出会い関係を築いていくわけですが、最初二人にはそれぞれ別の好きな人がいてお互いの恋愛を応援しあう形で物語は進行していきます。
親友であり同志、そこにあるのは友情かそれとも?
といったように、物語が進んでいくにつれ二人の間で築かれていく「固い絆」の意味するものが揺らいでいくところが妙味でしょう。
友情、愛情、恋心、それぞれの境界線を彷徨うような微妙で繊細な二人の関係性が話数を追うごとに刻々と、知らず知らずのうちに変化していくところが見事なんですが、ここがやはり本作品最大のみどころであるとともに面白さや感動を生み出す源ではないかと思います。
竜児は、大河に対する優しさ溢れる行動などを見ていても本当に「いい奴だなあ」という感じなのですが、わがままで狂犬のような大河にもひたむきさや真っ直ぐさがあって、どこか憎めず優しい眼差しを向けたくなる。
「とらドラ!」は、特に序盤は、大河の恋路を応援する竜児に大いに感情移入しながら見ることができて、それが物語への没入感を高める上手な仕掛けにもなっているのですが(※序盤の重要回といえる7話のプール回なんかはこの辺の仕掛けが生む面白さや感動を如実に感じられる注目話数として挙げられるでしょう)、終盤あたりにはおそらく二人とも応援したくなるくらいそれぞれのキャラの魅力に掴まれていることだろうと思います(笑)
脇役陣の充実と端役の存在感が生む学園ものアニメの魅力
「序盤二人にはそれぞれ別の好きな人がいて」と説明しましたが、竜児が最初に想いを寄せているのが大河の親友である櫛枝実乃梨という少女です。
引用元:©竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス/「とらドラ!」製作委員会
竜児と同様に常に大河に優しい眼差しをむけている彼女は、それ故に、「竜児と大河の関係」と「竜児と自分との関係」の間で大きく葛藤していくことになるキャラです。
声を演じた堀江由衣さんの仕事ぶりがやはり素晴らしいのですが、いわゆる恋のライバル的立ち位置のキャラとしてなかなか魅力的に描かれていた脇役の一人ですね。
引用元:©竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス/「とらドラ!」製作委員会
同じく、もう一人の恋のライバルキャラとして重要な脇役が川嶋亜美です。
何といっても登場時のインパクトが強烈なのですが、同時に以降の変化ぶりに目を引くところがあるキャラですね。それもあってか、彼女を好きだというファンを結構多くみかける気がします。
引用元:©竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス/「とらドラ!」製作委員会
本作は、この二人を筆頭に脇役達が本気でぶつかり合い葛藤する姿も実に丁寧に描いてくれる作品で、そういうところも大きな魅力ではないかと思います。
また、物語が中盤を過ぎたあたりになると、クラスにいる脇の脇のような端役キャラ達までもが存在感を放ち始めるのも本作の特徴です(この辺、原作からそうなのかアニメが特別そこに力を入れたのかは原作未読なのでわかりませんが)。
これまで学校でどこか浮いた存在だった大河と竜児の二人が出会うことで、互いに人間的にも成長していく姿が2クールの物語を通して描かれていくわけですが、それと同時に二人が過ごすクラスがひとつにまとまっていく様子にも充実感があったりすると。
学園ものアニメとして見た時にこういうところを地味ながらしっかり描けている作品というのも意外とそんなに多くないのではないかなと思います。
引用元:©竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス/「とらドラ!」製作委員会
『とらドラ!』 ここが良かった!
- 深夜アニメ史に残るツンデレヒロイン・逢坂大河の強烈なインパクト
- 作画の充実、鬼気迫る女同士の殴り合いシーン
- サントラの充実、名曲劇伴「Startup」が生み出すカタルシス
- 神回21話、岡田麿里脚本、名曲主題歌「オレンジ」
深夜アニメ史に残るツンデレヒロイン・逢坂大河の強烈なインパクト
(※前項でも本作の魅力といえる部分を語ってきましたので、ここではなるべくそれ以外の部分について触れていきます)
深夜アニメならではの超ハイテンションと馬鹿馬鹿しい故の素晴らしさで幕を上げる1話ですが、特に序盤は兎にも角にも「これぞツンデレの破壊力!」と叫びたくなるヒロイン・大河のキャラ造形の強烈さに尽きるかと思います。
引用元:©竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス/「とらドラ!」製作委員会
いきなりワンクール終盤を思わせるようなずしりとくる展開と描写が素晴らしい2話もまた然りですが、ここで神懸かった演技を見せてくれる釘宮理恵さんは大河役として本当にこれ以上ない配役だったのではないかと思います。
引用元:©竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス/「とらドラ!」製作委員会
わがままで狂暴でもうめちゃくちゃなんだけど憎めないキャラ、なんですよね。
竜児が作る手料理を美味しそうに食べる姿を見ていると全てを許してしまいたくなるわけですが(笑)、この辺の食事シーンなんかではホームドラマ的な見ていてほっこりするような充実感を味わえる作品ですね。どこか「clannad」にも通じる擬似家族としての優しさが感じられる作品ともいえるかもしれません。
作画の充実、鬼気迫る女同士の殴り合いシーン
本作は2クールを通して高い作画クオリティが維持されているので安心して物語に没入することができるのですが、こうした作画面で特に印象的、というか強烈に引き込まれるのが女同士の鬼気迫る殴り合いシーン(16話、21話など)。
引用元:©竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス/「とらドラ!」製作委員会
前項で触れた、脇役達が本気でぶつかり合い、というのもこうしたところで感じられるわけですが、とにかく一気に引き込まれる熱量と迫力が凄いの一言です。
誰かのことを想い、嘘偽りなく本気で目の前の相手とぶつかり合う。
こうしたシーンで感じられるキャラ達の切実な想いや誠実さは青春アニメとしての本作を象徴するものでしょう。
サントラの充実、名曲劇伴「Startup」が生み出すカタルシス
「とらドラ!」は音楽が良いアニメとしても推したくなる作品です。
本作が深夜アニメの数多のラブコメ作品と一線を画す「深夜アニメラブコメの王者」といえる理由としても、この音楽(劇伴)の良さは非常に大きいのではないかと思います。
劇伴担当は、「廻るピングドラム」や「月刊少女野崎くん」など、手がけた作品で常に高いアベレージで良い仕事をこなすという印象のある橋本由香利さんですが、「とらドラ!」は橋本さんの代表作といってもよいのではないかと。
「Happy Monday」「夕暮れの約束」「Lost my pieces」「空色の放課後」「雨色ロンド」「優しさの足音」……
などなど、日常曲の秀逸さもさることながら、印象に残る旋律を持った切ない楽曲の多さが本作品の魅力を倍増させているのですが、これについては、全話観終えた時サントラが欲しくなる人は結構多いのではないかと思います(関連商品の項で紹介してるので気になる方はチェックしてみて下さい)。
そんな楽曲群の中でも、特に強力なのがサントラ1曲目に収録されている「Startup」という曲。
本編で最初にこれが流れ出した時、思わずおおっ、と反応してしまった記憶もあるのですが、映像と切り離して楽曲単体として聴いても力のある名曲で、こういうのはアニメ作品の中で稀にみかける「その曲があるだけで作品の勝ちを約束するような類の楽曲」ではないかと思います。
3話や6話での使い方が特に印象的ですが、話のクライマックスでキャラの感情が高まった瞬間を引き金に本楽曲の琴線に触れるような切ないイントロが流れ始めそこに竜児のモノローグがのっかって……という時に画面に濃厚に浮かび上がるエモーショナルという名の塊。
そこには、「これぞ深夜アニメの力」と確かに呼べるものがこの上ない充実感とともに存在しているのではないかと思います。
「Startup」、何年ぶりかであらためて聴き返してみて、ドラムの軽快なフィルインから始まる高揚感のある大らかな弦のメロディが本作の青春ラブストーリーを高らかに謳っているようで、涙が出てきそうになります… これが映像と合わさるとさらに力を増すわけですから「とらドラ!」やっぱり素晴らしいですねぇ…
神回21話、岡田麿里脚本、名曲主題歌「オレンジ」
すれ違う感情、片想いの切なさ、キャラクターの絡ませ方やイベント投入の絶妙なタイミング、など、「とらドラ!」を見ていると、今やアニメ脚本家の第一人者的存在となった印象もある岡田磨里さんのトレードマークともいえる脚本術的要素が目を引くのですが、この辺については、もしかしたら岡田さんは竹宮ゆゆこ作品から結構大きな影響を受けていたりするのかもなあ、と。
岡田磨里さんは、個人的な話ですが、オリジナルを手掛ける時よりも本作のような原作ものをやっている時の仕事の方が良い印象を持つことが多いかもなあと思ったりもしますかね…。
で、こういった脚本の巧さが特に際立っていたのが21話。
話の内容については詳しく書きませんが、2クール目からのED曲「オレンジ」(名曲です)をキメに使ったTVシリーズのアニメ作品ならではの演出が冴え渡っているあたりも素晴らしいですし、小道具の活かし方もとても上手な本作屈指の話数となっています。
最後に
これから本作を初めて見られる方に向けて視聴ガイド的な話をすると、本作は強烈なスタートダッシュに終盤は怒涛の展開、といったように最初と最後が特に強力なんですが、敢えて不安点を挙げるならば、続きが観たくてしょうがない、という引きの強さが中盤では若干弱まりそこで視聴継続に難が出る人もいるかもしれない、というあたりくらいでしょうか。
引用元:©竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス/「とらドラ!」製作委員会
外見も含めてどこかコンプレックスを抱えたような二人の尖ったキャラ造形が印象的な作品、
と最初の方で述べましたが、最終25話で映し出される大河のやはり変わらずに小さくて愛らしい姿を見た時に、まるでこれまでの物語の全てがそこに集約されているかのような確信めいた感覚が言葉では形容しがたい感動となって押し寄せてくる体験は本当に格別なものでした。
評価・採点
作品評価
名作
傑作 絶対観た方がよい作品
名作 観るべき、マストではずせない作品
良作 観た方がよい(がマスト!とは言い辛いかもという)作品
佳作 時間があるなら是非観ることを勧めたい作品
水準作 普通だが見どころは(十分)ある作品
凡作 酷いが全否定ではない、どこか残念な作品
失敗作 ほぼ全否定、何とも残念な作品
傑作・名作 傑作と名作の中間(ただしカテゴリは名作とする)
傑作>名作 傑作寄り(同上)
傑作<名作 名作寄り(同上)
※惜作 名作になりえた惜しい作品
※超神回 ずば抜けて素晴らしい名作回がある作品
レーダーチャート評価
世界観:75 脚本/構成:90 演出:90
キャラ:95 演技(声優):95
引き:75 劇伴:90 作画:90
Ave. 87.5
100 唯一無二、これ以上はそうそう望めない最高峰
95 最高、傑作レベル、文句なし、その作品にとってなくてはならない
90 めちゃくちゃ良い、名作レベル
85
80 かなり良い、良作レベル
75 良い
70 なかなか良い、佳作レベル
65
60 普通、水準作レベル、少々物足りないが及第点は出せる
50 凡作レベル、2流
30 失敗作レベル、3流
ネタバレ厳禁度
★★★☆☆
少し注意。ネタバレによって面白さ・衝撃度が少し低減する可能性あり
関連商品
円盤
国内版BDボックスですが、2クール作品で1万ちょいは意外と安いなと…。初回限定版はこれの倍近い値段になってますが、特典の違いはキャラソン収録のCDの有無くらい?と考えると、私としては買うならこの通常版の方かもですね(ボックスデザインもこちらの方が何だか良さげですし…)
原作
原作も全巻所持してるのですが、未だに手を出せてません…。ファンの方の話を聞く分には、やはり原作もアニメもどちらも良いみたいなので、いつか読まねばとは思ってはいるのですが…
サントラ
というわけで、本文でも触れたサントラです。これは買って損なしだと思います!
フィギュア
大河のねんどろいどですね。
こっちの方がよりイメージにより近いかなという感じですが、これは月刊アニメスタイルの特典として付いてくるねんどろいどのようです。ていうか、月刊アニメスタイルに毎号ねんどろいどが付属してた?なんて話、今初めて知って驚きとともに買っておけばよかった!と少しの後悔が…(笑)
大河フィギュアは、山のように発売されていて全部紹介していたらきりがないのですが、個人的にはこれが一番出来が良いように感じますかね。
いやしかし、川嶋亜美のこれなんかもなかなかクオリティ高そうで見てると欲しくなってしまっていかんですね(笑)
執筆者 : PIANONAIQ (@PIANONAIQ)
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